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富山地方裁判所 昭和48年(わ)65号 判決 1977年3月23日

本籍

富山県高岡市伏木中央町八番地

住居

同 県同 市明野町五-三四

鉄工所職員

要堺重博

大正一一年三月一五日生

被告事件名

所得税法違反

主文

被告人を懲役四月に処する。

本裁判確定の日から四年間右の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は要堺和吉の二男であつて、同人が富山県高岡市伏木二丁目一番地八号において営む鉄工業伏木製作所の事業に従事し、営業面の仕事をすると共に経理事務をも担当しているものであるが、右和吉の営業に関し、

第一  昭和四四年の実際所得金額は、二、〇二〇万八、四五三円、これに対する所得税額は、九一八万七、九〇〇円であるにもかかわらず、公表計理上売上の一部を除外し、又架空の外注工賃、仕入金額を計上し、昭和四五年三月一三日高岡市博労本町五-三〇所在の高岡税務署において、同署長に対し、所得金額が四八六万四、九五七円、所得税額が一一七万四、五〇〇円である旨の虚偽過少の申告書を提出し、正規の所得税との差額八〇一万三、四〇〇円の所得税を免れ、もつて偽り、その他不正の行為により確定申告に係る所得税を免れ、

第二  昭和四五年の実際所得金額は二、九九三万七、七三七円、これに対する所得税額は一、四六八万二、二〇〇円であるにもかかわらず、公表計理上、売上の一部を除外し、又架空の外注工賃、仕入金額を計上し、昭和四六年三月一五日、高岡市博労本町五-三〇所在の高岡税務署において、同署長に対し所得金額が四九七万九、二〇七円、所得税額が一〇一万五、六〇〇円である旨の虚偽過少の申告書を提出し、正規の所得税との差額一三六六万六、六〇〇円の所得税を免れ、もつて偽りその他不正の行為により確定申告に係る所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一  被告人の検察官に対する昭和四八年二月一三日付、同月一五日付、同月一九日付、同月二四日付(前綴)、同年三月二日付各供述調書及び大蔵事務官の被告人に対する昭和四六年九月二八日付、同月三〇日付、同年一〇月九日付各質問顛末書

一  証人蓮花正章、同西部良三、同奥田久則、同中村晴夫、同井上外雄の当公判廷における各供述

一  近谷広行、要堺和夫(昭和四八年二月一二日付、同月二二日付)の検察官に対する各供述調書

一  朝山巖(昭和四七年八月一七日付及び同年一〇月六日付)、井上外雄(同年一二月一五日付)各作成の査察事件調査事績報告書

一  若築建設株式会社富山出張所長提出の「要堺和吉(伏木製作所代表)との取引について」と題する書面

一  株式会社富山相互銀行高岡支店永井亨作成の上申書

一  大蔵事務官の蓮花正章に対する質問顛末書(検察官請求証拠目録番号一一二)

一  昭和四四年、昭和四五年の売掛金調べ添付の別表

一  押収してある訪問日誌一綴(昭和四九年押第八号の3)、備忘録一冊(同号の4)小切手控綴一綴(同号の19)、統一手形用紙交付簿一冊(同号の23)、

判示第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する昭和四八年二月一九日付(後綴)供述調書及び大蔵事務官の被告人に対する昭和四七年八月一日付(第二回)質問顛末書

一  証人岩波昭則、同西田豊彦、同宮林朔弘、佐伯一夫の当公判廷における各供述

一  西部良三(昭和四八年二月七日付、同月八日付)、長井久政の検察官に対する各供述調書

一  近谷広行作成の同年三月六日付、同月七日付各供述書

一  中越パルプ工業(株)能取工場徳本章一郎作成の「伏木製作所(代表者要堺和吉)との取引について」と題する上申書

一  平和海運株式会社和田克己、有限会社中野鉄工所中野晴樹、株式会社富山銀行末広町支店前田進、日本高周波鋼業株式会社富山工場石黒敏久、米島自治会長島田誠一、横田本町自治会長西森嘉一、林機械工業所林、高岡信用金庫南部支店橘栄一、中越機械製作所吉江清治、北陸銀行伏木支店大平市治(昭和四七年七月二五日付)各作成の上申書

一  株式会社第一銀行内幸町営業部長提出の「日本高周波鋼業株式会社の振出した支払手形の裏書等調について」と題する書面

一  谷口組提出の「伏木製作所(代表要堺和吉)との取引について」と題する書面

一  岐阜県坂上郵便局長提出の「配達証明郵便物に対する配達局変更について」と題する書面

一  末広商会提出の「申立」と題する書面

一  大蔵事務官の林平二、朝倉満男(二通)、蓮花正章(昭和四八年二月八日付)、盛田茂、井波紀子、森かよ子、山田良三、宮林朔弘、松沢昭に対する各質問顛末書

一  大蔵事務官井上外雄作成の昭和四四年分脱税額計算書

一  大蔵事務官宮川秀雄作成の証明書(昭和四四年分所得税申告書写添付)

一  大蔵事務官井上外雄作成の昭和四四年分修正損益計算書

一  昭和四三年度末売掛金調末尾添付の別表

一  押収してある請求書綴(四四年分)三綴(前同押号の1)請求書綴一綴(同号の2)、元帳(昭和四四年度)一冊(同号の7)外注関係仕入帳(昭和四四年度)一冊(同号の8)、仕入帳(昭和四四年)一冊(同号の9)売上帳(昭和四四年)一冊(同号の10)、領収書綴(昭和四四年)一綴(同号の18)、手形控綴一綴(同号の20)

判示第二の事実につき

一  被告人の検察官に対する昭和四八年二月二四日付(後綴)供述調書及び大蔵事務官の被告人に対する昭和四七年八月一日付(第三回)、同月五日付各質問顛末書

一  証人車栄男、同秋元勝郎、同河村多鶴子の当公判廷における各供述

一  車栄男の検察官に対する昭和四八年三月六日付供述調書

一  辻産業株式会社、奥山英雄(二通)、京浜船貨整備株式会社、住友重機械工業株式会社浦賀造船所の金沢国税局査察課長に対する各回答書

一  日本生命保険相互富山支社大江藤一郎、北陸銀行伏木支店大平市治(昭和四八年二月九日付)、高岡信用金庫本店営業部尾崎広子各作成の上申書

一  福山俊孝、蓮花正章(同年三月二日付)、岩倉繁夫、中村啓三の各供述書

一  富士銀行渋谷支店の「若築建設(株)振出の支払手形ご照会について」と題する書面

一  東京都民銀行日本橋支店の手形の裏書等照会についての回答書

一  大倉事務官の有沢章、近谷広行(昭和四六年九月三〇日付)に対する各質問顛末書

一  井上外雄作成の昭和四八年二月一〇日付査察事件調査事績報告書

一  大蔵事務官井上外雄作成の昭和四五年分脱税額計算書

一  大蔵事務官宮川秀雄作成の証明書(昭和四五年分所得税申告書写添付)

一  大蔵事務官井上外雄作成の昭和四五年分修正損益計算書

一  秋元勝郎に対する昭和四八年二月九日付質問顛末書末尾に添付の書面

一  昭和四五年分伝票による損益科目の科目別金額調添付の別表

一  押収してある仕入帳(昭和四五年)二冊(前同押号の11、12)、売上帳(昭和四五年)一冊(同号の13)、手形発行控綴一綴(同号の21)

なお弁護人らの主張中、外国船の修理をした際、船長等に支払う所謂「バツクマージン」が、簿外経費として考慮されていないとの点については、被告人は公判段階において初めて右主張をするに至つたもので、後記ワールドワイドシツピングリミテツド関係で支払つたとする分を除き、昭和四四年及び同四五年中にこれを支払つた相手方、金額等も明らかでなく、又被告人の供述を除いてはこれを裏づける資料も全くないが、このうち比較的に金額等を特定しうるワールドワイドシツピングリミテツドの分については、これを否定する証拠もないので、被告人の供述どおりこれを簿外経費として認め、これにあてられた右売上額の二〇パーセントである三一一、四九〇円を所得金額から引き、判示第一のとおり認定した。

その余の弁護人らの主張は、前掲証拠に照らし、いずれもこれを採用することができない。

(法令の適用)

罰条

いずれも所得税法二三八条一項(いずれも懲役刑選択)

併合罪加重

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

刑の執行猶予

同法二五条一項

訴訟費用負担

刑訴法一八一条一項本文

(検察官杉浦肇出席)

(裁判官 近藤道夫)

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